【琵琶湖疏水】 ― 京都を潤した“水の道”を歩く

2025-11-01

京都の東山の麓に、静かに流れる一本の水路があります。
それが「琵琶湖疏水(びわこそすい)」です。
明治時代、京都の近代化を支えるために琵琶湖から京都市へ水を引く巨大な土木事業として建設され、 完成から130年以上たった今も、京都の景観と暮らしを支え続けています。
南禅寺や蹴上(けあげ)周辺を中心に、疏水沿いは美しい散歩道として整備されており、 春は桜、秋は紅葉、季節ごとに異なる表情を見せます。
観光客で賑わう清水寺や祇園からもほど近く、静かに京都の“水の文化”を感じられる穴場スポットです。


明治の偉業「琵琶湖疏水」とは

琵琶湖疏水は、1885年(明治18年)に着工し、1890年に完成した人工の水路です。
滋賀県大津市の琵琶湖から京都市蹴上まで約20kmにわたって水を引き、 発電、水道、農業、舟運(船の運行)などに利用されてきました。

特に注目すべきは、疏水の水力を利用して日本初の事業用水力発電が行われたこと。
この電力によって日本初の市電(京都電気鉄道)が走り、 京都が近代都市として発展する大きな原動力となりました。


琵琶湖疏水記念館 ― 歴史を“見て、学べる”スポット

蹴上インクラインのすぐ近くにある「琵琶湖疏水記念館」は、 疏水建設の歴史や当時の技術、京都の発展との関わりをわかりやすく紹介するミュージアムです。
館内では、当時の設計図や写真、模型、映像資料などを通じて、 明治時代の人々がどのようにしてこの壮大な水路を作り上げたのかを知ることができます。
館内には英語の説明もあり、外国人観光客にも人気です。

また、屋外の展望広場からは疏水や蹴上インクラインを一望でき、 春には満開の桜を眺める絶好のビューポイントになります。
京都の歴史を“体感的に”学べる場所として、子ども連れやカップルにもおすすめです。

利用案内

琵琶湖疏水記念館:〒606-8437 京都市左京区南禅寺草川町17
開館時間:9:00〜17:00(入館無料)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日休)、年末年始(12月29~1月3日)


見どころスポット

1. 蹴上インクライン

琵琶湖疏水の象徴ともいえる場所。
かつては船を台車に乗せ、斜面を上下させて運んでいた“船の坂道”です。
現在は線路跡が遊歩道として整備され、春には約90本の桜がトンネルのように咲き誇ります。
早朝や夕方は観光客も少なく、静かな時間を楽しむことができます。

2. 南禅寺と水路閣

南禅寺の境内を横切るレンガ造りの「水路閣」は、 まるでヨーロッパの古橋を思わせる美しいアーチ構造。
明治時代の近代建築と禅寺の静けさが融合した、京都でも屈指のフォトスポットです。

3. 哲学の道

疏水の分線沿いに整備された遊歩道で、 哲学者・西田幾多郎が思索にふけったことから名付けられました。
四季折々の風景を楽しみながら、京都らしい“静寂”に包まれた散歩を楽しめます。

b4. 琵琶湖疏水船(季節限定)

春と秋には、琵琶湖から京都までを実際に船でたどる「疏水船クルーズ」も運航されます。
トンネルを抜ける体験や、通常は見られない水路内部の景観など、 歴史ファンにも人気の体験型アクティビティです。


アクセス情報

  • 地下鉄東西線「蹴上駅」

    • 蹴上インクライン:駅を降りてすぐ
    • 琵琶湖疏水記念館:蹴上駅より徒歩10分
    • 南禅寺:蹴上駅より徒歩10分
  • 哲学の道:南禅寺より徒歩10分


まとめ

琵琶湖疏水は、京都の華やかな寺社とは少し違う、静かで深い魅力を持つ場所です。 歴史・自然・建築がひとつにつながり、歩くだけで京都の奥行きを感じられます。 春の桜、秋の紅葉、冬の静けさ──どの季節に訪れても新しい発見があります。 観光の合間に立ち寄って、京都の“水の道”が語る物語を感じてみてはいかがでしょうか。