江之浦測候所 ― 光と自然が語りかける場所

2025-10-15

神奈川県小田原市の海沿いの丘にある「江之浦測候所」は、現代美術家・杉本博司氏が構想したアート施設です。相模湾を一望できる高台に位置し、「人と自然、時間の関係を見つめ直す場所」として2017年に誕生しました。建築、石、光、そして風。そのすべてが一体となり、訪れる人に静かな感動を与えている注目度の高いアート施設です。

⚪︎ 見どころ

太陽と向き合う100メートルのギャラリー
敷地の中心にあるのが「夏至光遥拝100メートルギャラリー」。 その名の通り、夏至の日の朝日が差し込む方角にまっすぐ伸びる、全長100メートルの空間がそこにはあります。 壁面には杉本さんの代表作《海景》シリーズが並び、奥へ進むと目の前に相模湾の水平線が広がります。

石とガラスがつくる静けさの舞台
屋外には、透明な床をもつ「光学硝子舞台」や、古代建築の石材を再構成した「石舞台」があります。どちらも自然光の下で、時間や季節によってまったく違う印象を与えるのが魅力的です。びっくりするのは海風が吹き抜け、鳥の声が響く中で立っていると、建築そのものが自然の一部のように感じられる点です。また、その空間には茶室「雨聴天」や庭園もあり、静けさの中で過ごす贅沢な時間を味わえます。

自然と調和するアート空間
江之浦測候所は、単なる美術館ではなく、作品を見るというより、「自然と一緒に体験する」場所であるのが特徴です。朝と昼、晴れの日と曇りの日、光や風の向きが変わるたびに、同じ場所でもまったく違う印象を受けます。訪れるたびに新しい発見があり、「自然と時間の流れを意識する」体験ができるのがこの施設の大きな魅力です。

⚪︎抑えておきたいポイント!

江之浦測候所は完全予約制で、午前と午後の入れ替え制となっています。静かな環境を保つため、1回の入場者数は限られているそうです。予約は公式サイトをチェックし、チケットは早めに確保しておくのがおすすめです。 また、最寄り駅はJR東海道線の根府川駅で、予約者専用のシャトルバス(約10分)が運行しています。車で訪れる場合も駐車場が限られているため、事前に確認しておくと安心です。
※小学生以下の入場は不可。
※定休日や運営時間は公式サイトを確認してください。

まとめ

江之浦測候所は、華やかな展示や派手な演出こそありませんが、海・空・光・建築が静かに響き合う、唯一無二の空間です。「自然の中に身を置くことの心地よさ」や「時間の流れを感じることの豊かさ」を改めて思い出させてくれます。忙しい日常を少し離れて、ただ静かに光の移ろいを眺める。そんな体験を求めて訪れる人にとって、江之浦測候所は特別な場所になると思います。